兵庫県三木市の名門・チェリーヒルズゴルフクラブで行われている国内女子ゴルフメジャー「日本女子オープン」。その第2日、会場に集まったギャラリーと報道陣の視線を一身に集めたのは、まだ15歳の高校1年生、広吉優梨菜だった。
広吉は初日を5アンダーの好スタートで切り、5位につける堂々のプレーを披露。そして第2日も勢いは衰えず、6バーディー2ボギーの68をマークし、通算9アンダー。首位とわずか2打差の4位に浮上した。彼女の冷静さと堂々たるプレーぶりは、まるで経験豊富なプロゴルファーのようで、多くの人々を驚かせている。
この結果により、広吉は女子ゴルフの歴史に名を刻む可能性を大きく広げた。もし最終日に優勝を果たせば、15歳218日という年齢での優勝となり、2016年に畑岡奈紗が記録した「最年少日本女子オープン優勝記録（17歳263日）」を大きく塗り替える。さらに、ツアー最年少優勝記録である勝みなみの「15歳293日」も更新することになる。すなわち、彼女が勝てば、日本ゴルフ史に残る“二つの最年少記録”を同時に手に入れることになるのだ。
しかし、本人は冷静さを失わない。「優勝争いをしている実感はありません。予選を通過できたことに安心しています」と語り、周囲の熱気とは対照的に、謙虚な姿勢を見せる。この落ち着きこそが、彼女の最大の武器かもしれない。
実際にこの2日間、彼女のプレー内容は極めて安定していた。「グリーンを狙うショットが得意」と本人が語るように、両日ともパーオン率は驚異の17ホール。特に難関とされる5番ホールでは、残り210ヤードを3番ウッドでピン5メートルに乗せ、見事なバーディーを奪った。ギャラリーからは大きな喝采が沸き起こり、その瞬間、15歳の新星が大舞台で輝きを放った。
広吉は今年からナショナルチームの一員となり、すでに実力は高く評価されている。シーズン序盤からツアーに4試合出場し、48位、予選落ち、14位、8位と着実に成績を向上。さらに滋賀国体では個人優勝を達成し、団体戦でも3位入賞を果たすなど、全国レベルで結果を残している。今大会の出場権を得たのも、開幕わずか4日前のこと。練習ラウンドはわずか1日しかなかったが、その限られた準備をものともせず、堂々とした戦いぶりを見せている。
憧れの選手は米ツアーで活躍する吉田優利。広吉自身も「無理をしないように攻めてきたけれど、100ヤード以内をもっとピンそばにつけられるようにしたい」と語り、すでに次の課題を見据えている。15歳にして、冷静な自己分析と強い向上心を併せ持つ姿は、多くの関係者を唸らせている。
一方で、首位に浮上したのはツアー2勝の実績を持つ堀琴音。第2日に67を叩き出し、通算11アンダーで堂々の首位に立った。ベテランの落ち着きと経験が、若き挑戦者たちにとって大きな壁となるだろう。また、19歳のルーキー・中村心も広吉と並んで4位に入り、若手の台頭が大会全体を盛り上げている。
こうして日本女子オープンは、ベテランと新鋭が入り乱れる世代交代の縮図のような展開となった。観客は今、新たな女子ゴルフの時代が幕を開ける瞬間を目撃しているのかもしれない。
広吉優梨菜が歴史を塗り替えるか、それとも経験豊富なプロが意地を見せるか。最終日のドラマは、ゴルフファンだけでなくスポーツファン全体の心を揺さぶることだろう。たった15歳の少女が見せる冷静さ、堂々としたプレー、そして未来を切り開く力。その姿は間違いなく、日本女子ゴルフの新しい光となっている。
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